アメリカ建国期の共和主義と自然権ーA republic, if you can keep it.
2015年、Randy E. Barnettが憲法を共和主義から読み解く研究書を発刊。彼の共和主義観によれば、個人の不可侵の自然権が最初にあり、それを保護するために共和政府が樹立されたとする。
Our Republican Constitution — Randy E. Barnett
保守系法律家団体のフェデラリスト協会のサイトにおいて、Sominが書評で称賛。
これに対して、Barnettの定義する共和主義が、単なる19世紀古典的自由主義の再述にすぎないとするBalkinの反論。
Which Republican Constitution? by Jack M. Balkin :: SSRN
ちなみにBalkinの共和主義観はこちら。Living Originalismとの関連が面白い。
Republicanism and the Constitution of Opportunity | Texas Law Review
建国期の共和政体と自然権を、対立構造を捨象して理解するCampbellの研究も登場。
Republicanism and Natural Rights at the Founding by Jud Campbell :: SSRN
(確かに、現代の通説的理解によれば、自然権は政府の権力を制限するものである。しかし、建国期の共和主義思想からは、代表政府は公共善実現のために樹立されたのであり、自然権はその「善き政体」を志向するものであった。それゆえ、自然権はそれ自体、必ずしも制限国家を志向したものではない。)
標題のフランクリンの言葉を借りるまでもなく、アメリカは共和政体である。しかし、その「共和主義」の内容は、実に多義的である。
建国期の共和主義理解が、現代の保守対リベラルの相克を反映している点も面白い。歴史に遡りながらも、その視点は常に現代的問題関心に貫かれている。
ニール・ゴーサッチと言論の自由
トランプ大統領は、ニール・ゴーサッチ氏を合衆国最高裁判所裁判官に指名した。今後、上院の承認に向けたヒアリングが行われることになる。
ゴーサッチ氏が、言論の自由(合衆国憲法第1修正)をどのように理解しているのか、興味深い記事がある。
まず、メディアの言論の自由について、トランプ大統領は「偽ニュース」というフレーズを用いてその自由の制限に腐心している。しかし、ゴーサッチは、メディアの言論の自由に対して、その擁護に動く可能性がある。
一方、第1修正の保障の徹底により、リベラル派による選挙資金制限の試みはさらに後退するかもしれない。この領域において、彼の保守的傾向が顕在化するのではないか。上院のヒアリングにおいて、この点を精査すべきであるという指摘がある。
(2017年2月21日追記) NY Yimesによる最新の記事も、同旨だ。ゴーサッチのこれまでの言論の自由(出版の自由)に関する法的判断をみると、トランプの期待に反して、それを擁護する方向が明確だ。
On Free Press, Supreme Court Pick at Odds With Trump (by Adam Liptak)